2017/04/28
レーザーは、紫外領域から赤外領域まで広い波長域のものが実用化し利用されていますが、意図した(治療等の目的のための)照射と意図しない照射が考えられます。
人体に対して意図しないレーザー照射がおきた場合、最も障害を受けやすい(最も小さなエネルギーで障害を受ける)人体の器官は眼です。また、最も広くレーザー光を受ける器官は皮膚です。
そのため、レーザーの露光量を管理するガイドとして、最大許容露光量(MPE)があります。
最大許容露光量(MPE: Maximum Permmissible Exposure)
通常の状況下において、人体に照射されても悪影響を受けることがないとされるレーザー放射レベルのしきい値です。
各種の動物実験や人体の事故例、治癒例等をもとに、人体(眼または皮膚)へ照射した場合に障害発生率が50%となるレベルの1/10の値で設定されています。
眼に対するMPEと皮膚に対するMPEがあります。
障害の発生確率には個体差があり、MPEは厳密な障害発生の境界値を示しているわけではないため、いかなる場合もレーザー放射に対する露光はできるだけ避ける、もしくは少なくする対策を行う必要があります。
最大許容露光量は、レーザーの波長・露光時間(パルス幅)・光源の大きさ等により変わってくるため、製品ごとで値が違います。
装置が眼に対するMPEを超える場合(クラス3R、3B、4)には、特定の波長に対して十分な保護を備えるよう設計された目の保護具(保護めがね等)を用いるべきです。
製品の添付文書やマニュアルに記載されている保護めがねの光学濃度(OD値)は、製品の使用中、眼に対する最大許容露光量(MPE値)を超えないように算出し、指定しています。
光学濃度 OD値(Optical Density)
特定波長光線の光量をどの程度弱められるかを表す値です。
透過率の常用対数をとり、正の値にするために負号を付けたものです。
OD値が大きいほど透過する光が少なくなるため、眼には安全です。
可視光線透過率 VLT値(Visible Light Transmittance)
可視光線の透過率(レンズの外側から内側に通過してくる可視光線の割合)を百分率(%)で記します。
0%に近いほど可視光線を通さないため視界が暗く見え、100%に近くなるほど明瞭に見えます。
保護めがねには、波長とOD値が必ずマーキングされています。
図の保護めがねの場合ならば、10600nm(10.6μm)の波長ならば最低OD 6.5程度(透過率10-6.5=約0.00000032倍)の性能を持っており、VLTが93%あるためレンズを通しても比較的明瞭に見えることが分かります。
他の光の波長に対してはどの程度のOD値になるのか分からないので、保護の役割はなしません。
例えば波長300-450nmでOD4+、波長750-1000nmでOD5+とマーキングされた保護めがねがあったとします。波長が近い700nmのレーザー光の製品に使用しても、多少の保護になるかというと、OD1にも満たないことも考えられます。
記載されている波長範囲の保護としては使用しないでください。
保護めがね等の眼に対する保護手段をとっていない場合、レーザー装置の使用中には公称眼障害距離(NOHD)離れる必要があります。
製品の添付文書やマニュアルに記載されているため、ご確認ください。
公称眼障害距離(NOHD:Nominal Ocular Hazard Distance)
最大許容露光量(MPE)未満になるレーザー出力開口からの距離です。
出力パワー、レーザービーム径、ビーム拡がり等から距離を算出しています。